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今回は、ラルズネット編集部が、社長の鈴木に、「企業戦略として、これからどんなことが大事になってくると思いますか?」というテーマでインタビューをしました。
弊社だけでなく、いろんな企業や、いろんな業界に転用できそうな面白い内容だったので、ぜひ読んでみてください!
1.「時間」の価値が、かつてないほど高騰している
── 企業戦略として、これから大事になってくることは何だと考えていますか?
鈴木:「時間」です。これが、一番のテーマになると思っています。
──「時間」ですか・・?
鈴木:はい。企業活動には、販売、顧客対応、製品・サービス企画、人材採用、職場づくり、仲間とのコミュニケーション、経営における意思決定など、欠かせない要素がいくつかあると思いますが、それらを円になるようにノートに書いていくとすると、中心に置くのは「時間」になってくるんじゃないかなと。
「時間」が、すべてを考える上での起点となるということです。

── 詳しく聞かせてください。
鈴木:これ、完全にスマホが原因だと思うんですが、今、「時間」の価値がかつてないほど高騰しているように思うんです。
スマホがまだなかったころは、基本的に、テレビは家でしか見れなかったし、仕事は会社でしかできなかったじゃないですか。駅のホームでは電車を待つしかなかった。
でも、スマホのおかげで、駅のホームで仕事したりテレビ見たりしてるうちに、電車が来るようになりましたよね。
電車の中でも同じことができるので、もう、切れ目なく「使える時間」が連続して、「捨てる時間」がほぼなくなったと思うんです。
その結果、世の中の価値観がガラっと変わってしまったんじゃないかなと。
── みんなが「時間」の価値に敏感になった・・?
鈴木:そうです。無意識にせよ、みんな「時間」の価値をあらためて考え始めたんです。
「この時間は、本当に自分にとって有意義なんだろうか?」と、検証が始まったわけです。
そうやって新たに価値を再定義された時間というのが、これが昔と比べてめちゃくちゃ細かい。
「秒」単位です。
実際、長い動画って、全然見られなくなってきてますよね。
媒体や内容にもよりますが、今のユーザーに集中して見てもらえる動画の長さは、企業サイトの製品紹介で3分くらい、FacebookやTwitter(現X)で45秒くらい、Instagramだと30秒くらいなんじゃないかなと思います。

画像引用元 SHARP / AQUOS zero スペシャルサイト , Twitter / Sony (@sony_jpn) , Instagram
── たしかに、私も動画が長いと、途中で違うこと始めちゃいますね・・。というか、長いというだけで見ないかも・・。
鈴木:それが普通だと思います。世の中の価値観の更新って、いつも、そっと起きるんですよね。気付いたら終わっているというか。
たとえば、休日に上司から電話がかかってくるのは誰でも嫌だと思いますが、最近では、休憩中ですら上司に話しかけられて嫌な気持ちになる人もけっこういるんじゃないかなと思うんですよ。
なんとなく「自分の時間を奪われた」と感じる人が増えてるんじゃないかなと。
これはダメなことではなく、むしろ、時間価値が高騰してる現代においては正常な感覚だと思います。
── なるほど。コミュニケーションにおいても「時間」の価値を軽視すると、すれ違いを生んでしまうかもしれないということですね。
鈴木:お金は盗むと捕まりますが、時間は今のところ捕まりませんよね。そのため、お金よりシビアに考えられていないこともあると思います。
時間もコインの形をしていたらわかりやすいんですけどね(笑)

2.「時間」という商品
鈴木:先日、タクシー運転手さんが、「いやぁ、最近は話しかけると不機嫌になるお客さんが増えてきてねぇ」ということをおっしゃっていました。
私も、「うーん、たしかに、話しかけられるよりは、話しかけられない方がいいなぁ」と思いました。
そのとき、ふと、このタクシーの運転手さんは、自社の商品が「時間」だということに気付いているんだろうかと疑問を持ちました。
もしかしたら、自社の商品を「移動」だと思っているんじゃないかと。
移動だけなら、みんな電車やバスに乗るわけで、それでもタクシーに乗る理由というのは、「時間」を買えるからです。
タクシーというのは、本来であれば電車やバスのつり革につかまって移動しかできない時間を、「移動しながら○○ができる」という時間に変換できる商品ですよね。
人によって、○○に入るのは、「資料作成」だったり、「読書」や「睡眠」だったりしますが、とにかく時間を買っているわけです。
で、タクシーの運転手さんがお客さんに話しかけるというのは、せっかく買ったその人の時間を奪う行為になっちゃうわけですよ。
これだと、自分で売った商品を自分で奪うという、よくわからないことになってしまう。
たとえばの話ですが、コンビニで唐揚げを買ったのに、店員に唐揚げを盗られたら怒るじゃないですか。そんなかんじなのかなと(笑)
そういえば先日、インターネットのショッピングサイトで、テーブル付きのフィットネスバイクがバカ売れしてるというニュースを見ました。これも、本来であれば、漕いで痩せるという機能しかなかった商品に、「漕いで痩せながら、その間に、◯◯もしちゃいましょう!」という、「時間」の価値を打ち出したから売れたのかもしれません
実際、ゲームしながらダイエットとか最近流行ってますよね。
「△△できます」だけだとダメで、「△△しながら、◯◯できます」のような、時間価値をより高める商品はこの先も売れていく気がします。
3.時間価値を高めるための3要素
鈴木:「時間」の価値から考えるのは、製品・サービス企画においてもすごく重要です。
日本では、生産年齢人口(15~64歳の人の数)が、1990年代は人口の70%を占めていましたが、2018年に59%まで下がっています。
そして、現在、社会的にも、人手不足倒産が大きな問題になっています。
魅力を打ち出せなかったり、労働環境が劣悪な会社は、すぐに採用難・退職者増で回らなくなり、つぶれてしまうリスクが高くなっています。
この局面でやるべきことは、人材を確保することと、一人当たりの生産性をアップすることです。
仮に、どうしてもやらなければいけない業務が4人いても回らなければ、5人目を雇用するか、4人でも回るよう効率化するしか方法はありませんが、5人目を雇用するというのは、今、簡単ではなくなっています。
ここでもし、4人かかる業務を、半分のリソースの2人で回せるような製品が出てきたら、それは間違いなく売れると思いますよ。
── 人が減って採用が難しくなっている状況では、生産性アップの必要性が過去にないほど高いと。だから、相手の手間を減らすサービスは人気が出るということですね。
鈴木:そうですね。もっと詳しくいうと、時間価値を高めるというのは、
①使える時間が増える
②費やしていた時間を減らせる
③時間あたりの密度を濃くする
ということです。これらのうち、いずれかを満たす製品・サービスの人気が出ると思います。
──「時間あたりの密度を濃くする」というのはどういうことでしょうか?
鈴木:たとえば、ずっと部屋にいて昼寝してテレビを見て1日を終える場合と、早朝の飛行機で上海に行き、ディズニーで遊び尽くし、日帰りで日本に帰ってきたあと、夕方に友人と温泉に行き、夕日を見ながらビールを飲んで帰宅して1日を終える場合とでは、後者の方が多くの時間を過ごしたと感じるはずです。「何日分も遊んだ気がするけど、まだ今日なんだ」というふうに。
物理的な時間を増やすことはできなくとも、時間あたりの密度を濃くすると、少なくとも体感として使えた時間は増えたように感じますよね。これも、時間価値が高くなった事例だと思うんです。

── なるほど。そういうケースもあるんですね。ところで、さきほど出た、時間価値を高めてくれる①~③というのは、具体的にどんなジャンルが当てはまるんでしょうか?
鈴木:うーん、パっと思いつくものだと、「健康になれる」「効率化できる」「やりがいを擬似体験できる」とかですかね。
なんとなく、そのあたりの物や人やイベントは、ますますヒットしていくような気がしますね。
── そうか、どうりでテーブル付きフィットネスバイクが売れるわけですね(笑)しかし、この①~③の要素は、採用活動や職場環境を良くしていく上でも使えそうです。メモしよう。(メモメモ・・)
4.お客様から手間と複雑さを取り除き、「時間」を増やす
── 時間価値が高い時代に何かを発想するコツというのはありますか?
鈴木:「お客様が、今、何に時間が取られていて煩わしいと思っているのか」に注目することではないでしょうか。
あとは、「複雑さ」を徹底的に排除すること。
時間価値が高騰すると、複雑なものへの拒否感がますますすごくなると思うんですよ。
ちょっとでもめんどくさそうなものは、それだけで「もうムリ」となってしまう人が増えるんじゃないかなと。手間に対するガマンの限界値が下がるというか。
3秒あれば知人にLINEでスタンプを送れるし、30秒あれば今日あった出来事をチェックできます。3分あれば、インターネット上の学習コンテンツの1講義が見終わる時代です。
そういうご時世に、「なんだか難しそう・・」「説明書読まないとわからなそう・・」「よく考えないと理解できなさそう・・」というものは、さすがにみんな使わなくなると思うんです。
5.「速い!」「カンタン!」「ワクワクする!」時間価値から企業活動のすべてを再設計せよ
── たしかに。でも、意外とそういうものって、世の中に多いですよね。
鈴木:すごく多いですね。だからチャンスなんです。
同じような機能・サービスでも、「めちゃくちゃ速い!」「めちゃくちゃカンタン!」「めちゃくちゃワクワクする!」というように、時間価値を主軸に置いてつくり直すだけでも、受け入れられ方が全然変わってくると思うんです。
差別化って、誰もやってないような斬新なことをやるだけじゃないですから。
──「とにかくカンタンに」というのは、鈴木社長が社内ミーティングでいつも言っていますね。1000回くらい聞きました(笑)
鈴木:言ってますね。今でも毎週言ってます。
「まったく知識のない人が、その製品をパッと見たときに、まず、何をすればいいのかがわからないとダメ」と。
昔は、「遠くから見たときに、国籍の違うおじいちゃんでも、1秒でわかるように」と言っていたこともあります(笑)
── それはムリがあります(笑)しかし、時間価値から考えることって、ほんとに大事なんですね。
鈴木:そうですね。重要なので繰り返しになりますが、今、すべての起点にすべき概念は「時間」で、私はここが命運を分けると考えています。
時間価値がかつてないほど高騰しているため、時間のことを考えていない人や組織やサービスは、残念ながらうまくいかない可能性が高いと思います。
考え方はシンプルです。
相手に価値の高い「時間」を与えられるのか、相手から必要以上の「時間」を奪ってしまうのか?
自分や、自社や、自社の製品・サービスは、どちら側にいるのか?

販売、顧客対応、製品・サービス企画、人材採用、職場づくり、仲間とのコミュニケーション、経営における意思決定など、企業活動のすべてを、時間価値を中心に設計し直すくらいの気概を持って、弊社も新しいスタートを切り始めています。
── 今回はありがとうございました。

鈴木 太郎
(株)ラルズネット代表取締役社長。函館市出身。2006年明治大学卒業。宅建士資格を取得し、野村不動産ソリューションズ(株)入社。不動産仲介(法人営業)に携わる。その後、講師職を経て2010年当社入社。営業部にて制作事業の売上を3倍にリード。2013年同社GM就任。同年、総売上最高値更新。2014年同社常務取締役就任。営業、商品企画、経営戦略を担当。2020年から現職。
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